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【潮風対談】

クルーズの楽しみと課題

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一味違うものを提供していると思います。
宮岡 例えば阿波踊りを楽しむなら船に限ります。百万人も来るから、陸では宿がとれないが、船はその心配はない。ねぶた祭りなども同じです。
上田 クルーズのいいところは、いきなり行くのではなく、船上でそれにちなんだ踊りの講習会あり、お料理ありで、徐々に期待を高めて目的地に行く。そういうほかの旅にはない旅のよさがあります。
外国ではクルーズのタイプによる色分けがはっきりしていて、船も、価格帯も、目的や雰囲気も違う。ですから、自分はこれで行きたい、今度はもっといいのに乗ろう、カジュアルなものに乗ろうなどと選べるので、客層が広がっています。日本のクルーズも個性が出ているとは思うんですが、価格帯も似たところが多いし、求めているクルーズ路線も似ているようです。こうした色分けについてはどのように考えていらっしゃいますか。
宮岡 若い人にもう少し多く乗ってもらうには値段を安くしなければいけないが、これがなかなか難しいんです。日本籍船で日本中心のクルーズとなると食事の材料は主として値段の高い日本で手当を要するので、お客様一人当りの食事材料費は日本籍船の「飛鳥」では外国籍船の「クリスタル・ハーモニー」の約三倍近くかかります。又日本人客主体ですから日本人船員を多数乗船させねばなりません。
もう一つは、カジノの規制につながる話ですが、外国置籍船はカジノを営業の一部として、他の収人とトータルで収支を考えています。でも日本では法律で本格的なものができず、景品は記念品程度しか出せない。せめて、パチンコ並みにできないだろうかと思っています。現状では日本籍ですとカジノが本当に好きな人は寄りつかないので、そういう点を直してもらいたいんです。
上田 確かに外国のクルーズ船の価格帯を抑える一つの要因として、船客のお金の落とさせ方のうまさを感じますね。それが今おっしゃったカジノやチップ制です。それと、船上ショップでも、クルーズの後平にバーゲンセールを開き、購買意欲を煽っており、ある外国のクルーズ船では、日本の船客が店ごと買ってしまうのではないかと思うほどよく買っていました。その意味でシステムがとてもうまくできている。ですから、カジノの問題とかがクリアできれば、少し違った面も出てくるのかなと思います。
宮岡 それから、日本の場合は、横浜から出て横浜に帰るなら飛行機を使わなくて済むけれどそうでないと往復の飛行機賃が高くついてしまう。航空運賃がアメリカ並みに安くなったらクルーズ客もずいぶん増えますね。
上田 現状ではフライ&クルーズのよさが出てこないんですね。
宮岡 アメリカがクルーズを専門にやり出したのは一九六五、六年ですから、三十年は経っています。一九八〇年代後半に航空路の自由化がありクルーズ客が急増しました。日本はまだ足掛け八年でなかなかアメリカみたいにはいかない。だけとこうした点を直していかないとクルーズ人口は増えていかないのではないかと懸念しています。

 

国際競争への対応は…
上田 海外のクルーズ業者はアジアに目を向けており、大手の業者も五月からアジアに配船してきます。外国のクルーズ船の中には日本人客を対象に、和食サービスをしたり、通訳をおいたり、積極的な動きが出てきています。こういった国際競争に勝ち残っていくための対策はいかがでしょう。
宮岡 今言った面に尽きますが、なぜ外国に置籍するかというと、税金の関係もあるし、乗組員の編成も国境を越えて自由にできるからです。
上田 日本籍の外航クルーズ船は、当面、船客の対象として、主力を日本人においているのでしょうか。
宮岡 クルーズというのはお客のマジョリティーの文化が支配してしまうわけです。一つ

 

 

 

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